T


 上の図は季節変化の特徴を捉えるために気象庁のデータ(1971〜2000at KOFU)から過去30年間の甲府に於ける主な気象平均値を取り出しグラフにしたものです。日射量(紫)に注目してください。よく農業の指標に使われる日照時間(水色)と比較すると起伏が激しく変化していることがわかります。これは地表に届く太陽からのエネルギー量を測定した数値のため空気中の雲や粒(エアロゾル)、雨、雪によって遮らる場合や太陽の高低なども数値に現れているためです。梅雨(平年6/8〜7/20)の特徴も見てとれます。


U


果たして24節気は実際にあっているのか?
このグラフを作るまで正直疑っていました。旧暦の中身を知るほどに数値の上で殆ど裏切られることが多かったからです。(旧暦は新月から月が始まるので年間で最大約一ヶ月程のづれが生じる年が出てしまいます。)
 上の日射量を手掛かりに気温と日射量との因果関係を探ってみました。気温-日射量の相関図です。日射量が上がると気温が上がり日射量が下がると気温は下がるのか、また、日本の季節に影響を与える4つの高気圧の移り変わりと実際の季節の節目である節気は現代も生きているのかという疑問です。
春夏秋冬は歳時記ではそれぞれ立春、立夏、立秋、立冬で区切り定めています。
グラフの左下を見てください日射量が下がるほど気温は下がっていきます。冬至は太陽が最も低いところを通過する日ですがここで気温が最低温度になるのではなく約1ヶ月後大気がやっと冷えきり正に最も寒い気温を記録する大寒の日がやってくることを証明しています。またグラフ右上に行きますと小笠原高気圧の勢力が強まり梅雨前線が日本付近に停滞している頃、最も太陽が高く昇る夏至(6/21頃)に到達し梅雨の影響で日射量は下がり気温はやや鈍りますがやはり1ヶ月後大暑(7/22頃)で気温は大寒ほどピンポイントではありませんが暑い気温を記録しています。この3日程前に日本人は土用(黄経117°)のうなぎを食べスタミナをつけます。8/23頃の処暑、まだ暑い最中と頭では考えている頃平均気温は初めて26℃を下回り暑さの峠を越え秋の方にゆっくりと歩き始めている様子も伺えます。
 暑さ寒さも彼岸まで。春分の日、秋分の日の頃を過ぎると暑さ寒さも緩むという意味ですがお彼岸の中日は夜と昼の長さがほぼ同じになり太陽は真東から天の赤道を通過し真西沈みます。これもよく見てみますと正に春と秋のほぼ真ん中を示しています春と秋を分けるとは本当に言葉の通りです。春と秋の特徴を見てみますと春の方が日射量増減に比べ温度上昇が少ないのは、シベリア高気圧からの冷たい季節風の影響で大気が温まりにくくなっているからだと考えています。


V


 魚を例にたとえて旬を考えてみます。旬とは魚の体の中で筋肉中の脂肪量が最大になる時期と考えられているようです。(地域と種類によっては少ない時期が旬と捉える場合もあります。)つまり子孫を残すため産卵時期の前により多くの栄養を蓄える時期をいいます。脂肪は体積当たりのエネルギーが最も多い物質です。自然の中から生命が発明した最も軽く最もエネルギーのあるこの脂肪が乗る時期が人間にとっての旬となります。
実は良く見てみますと殆どの魚は春先から夏にかけて産卵しています。何故かは左の図を見てください。上の図は3/20頃の植物プランクトンの大発生(大爆発)の衛星画像です。スプリングブルーム(春の大開花)という現象で毎年この時期に起こります。正に陸地では桜が開こうとしている時期と同じ時、海でも春の訪れを告げるイベントが始まっています。植物プランクトンの周りには動物プランクトンが集まり、小魚、が集まり大きな魚が集まる。子孫を残すための生存競争のスタートでもある瞬間です。大きなゆりかごのように黒潮にのって北上するもの、肉食のスズキなどは春先産卵した稚魚を食べれるように冬産卵している場合もありますが、秋から冬にかけて多くの魚が美味しくなるのにはこの時期に備えているからだと考えられています。
 走り、盛り、名残り日本の料理は様々な組み合わせでその季節の機微を教えてくれます。季節を惜しみながらまた来るきせつに期待を膨らませる。一つのお膳の中で行きつ戻りつする時間の流れが同時に存在する。日本でしか味わえない素晴らしい世界感がそこにはあると思います。


二十四節気 一覧
黄経 節気 説明
315°立春 寒さも峠を越え、春の気配が感じられる
330°雨水 陽気がよくなり、雪や氷が溶けて水になり、雪が雨に変わる
345°啓蟄 冬ごもりしていた地中の虫がはい出てくる
0°  春分 太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなる
15° 清明 すべてのものが生き生きとして、清らかに見える
30° 穀雨 穀物をうるおす春雨が降る
45° 立夏 夏の気配が感じられる
60° 小満 すべてのものがしだいにのびて天地に満ち始める
75° 芒種 稲や麦などの(芒のある)穀物を植える
90° 夏至 昼の長さが最も長くなる
105°小暑 暑気に入り梅雨のあけるころ
120°大暑 夏の暑さがもっとも極まるころ
135°立秋 秋の気配が感じられる
150°処暑 暑さがおさまるころ
165°白露 しらつゆが草に宿る
180°秋分 秋の彼岸の中日、昼夜がほぼ等しくなる
195°寒露 秋が深まり野草に冷たい露がむすぶ
210°霜降 霜が降りるころ
225°立冬 冬の気配が感じられる
240°小雪 寒くなって雨が雪になる
255°大雪 雪がいよいよ降りつもってくる
270°冬至 昼が一年中で一番短くなる
285°小寒 寒の入りで、寒気がましてくる
300°大寒 冷気が極まって、最も寒さがつのる
(国立天文台 歴算室 暦用語集より)